海外絵本の歩み

絵本のはじまり

ブルーノ・ムナーリ

世界で最初に出版されたものはチェコ教育学者コメニウスが1658年に出版した「世界図絵 – オービス・ピクタス」である。植物学や動物学など様々なテーマについて分かりやすい文章と木版画で百科事典のように解説された挿絵付き教科書、つまり学習絵本である。

木版にはじまる印刷技術の発展から絵本黄金時代

印刷技術については1445年ごろにヨハネス・グーデンベルクが活版印刷の発明をしたのがはじまりとされる。
18世紀後半にはトマス・ビュイックがコストを抑えて印刷ができる木版を普及させ、そして19世紀後半に多色刷技術の第一人者である木版彫版師エドマンド・エヴァンスが絵本作家の3人の巨匠ウォルター・クレイン、ケイト・グリーナウェイ、ランドルフ・コールデコットそれぞれの編集、出版と総合的に制作したことで成功した。
この木版彫版師と3人の画家が近代絵本を確立。その時期をイギリス第1次絵本の黄金時代という。

印刷技術がさらに発展した1950〜1960年代はオフセット印刷が活躍した。
現代でも色彩豊かに表現されたオフセット印刷のイラストが、アメリカだけでなくフランス絵本やチェコ絵本のヴィンテージや古書絵本からも見ることができる。このように印刷技術が発展したことにより、絵本制作において様々な技法の幅が広がった時代を第2次黄金時代という。

一方、アメリカでは多くの出版活動の場があったため、第1次世界大戦混乱期に多くのヨーロッパ出身の画家が移住して活躍した。またオフセット印刷により、絵本が量産可能だったことで、1930〜40年代はアメリカの第1次絵本黄金時代といわれている。

海外の絵本作家

黄金時代から誕生した各国の絵本作家

アメリカの第2次絵本黄金時代(1940〜60年代)では、ヨーロッパから移住した多くの画家により、様々な国の特徴が見られる色彩や表現方法が登場する。たとえば、コラージュや仕掛けを用いたエリック・カールや、イタリア生まれの木版画家アントニオ・フラスコーニが描く独特な色彩、そして、旧チェコスロヴァキア生まれのピーター・シスは、絵本作家だけでなく、アニメーションやグラフィックデザイナーとしても多岐にわたり活躍した。

絵本作家だけでなく様々な分野で活躍した特筆すべき作家といえば、イタリアのブルーノ・ムナーリである。ムナーリは、美術教育家でもあり、グラフィックデザイナーや彫刻家など絵本制作以外にもあらゆる活動をした芸術家であった。

北欧陶器と絵本

北欧でもエルサ・ベスコフなど絵本の黄金時代に深く影響を受けた作家もいた。
また、このころ北欧のスウェーデンの戦後において、もっとも影響力をもった陶器作家の一人であり、グラフィックデザイナーで、テキスタイルデザイナーでもあった絵本作家スティグ・リンドベリの洗練されたデザインで描かれたイラストの絵本や陶器が人気を博す。フィンランドでは、ムーミンでお馴染みのトーベ・ヤンソンの作品があり、アラビア社が制作したアラビア食器にも登場する。またアラビア社の陶磁器人気デザイナーのウラ・プロコッペやカイ・フランクなどがデザインしたヴィンテージ作品も長く愛用されている。